※ジュダアリ(ぬるいエロ有)
※今回白龍くんはお休みです



















「ーッ、ぃ、ぁあっ!」

融解するような甲高い声が耳に障る。自分の喉から吐き出される音が嫌でたまらないのに、体内を滅茶苦茶に掻き回されると止まらない。

「あ、あ、ゃ…ッひ!まっ、待…ッぁあ!」
「は…、ちょっと五月蝿ぇよ」

黙れとばかりにシーツに顔を押し付けられ息苦しさに喘ぐが、くぐもった声が微かに返る程度で。後ろから攻め立てる人物に容赦の二文字など初めから期待していないが、いつもより酷い気がする。何かあったのかと考えるがしかし、浮かぶ端から脳髄を揺さぶる快楽に霧散していき結局聞けやしない。

「おい、何考えてんだか知らねぇがこっちに集中しろ、よ」
「ぃ、ぐッ!ぁ、悪…ぃ」

ガツンと奥に性器を突き入れられ、切れ切れにごめんと謝るが無視されて。あ、これ失敗したなと思った瞬間再び遠慮の無い抽挿が始まった。

「ま、ちょ、…ひ、ぃ、あーッ!」
「お前はバカみたいに喘いでろよ」

一度注がれた精液のせいで卑猥な水音が大きく響く。改めて強く掴まれた腰は恐らくコイツの手形がついてしまっているだろう。明日は確か二限目の作業時にジャージに着替える必要があったはず。着替える時に気を付けなくてはと、どこか逃避気味に思考を飛ばした。








「そういや何つったっけ?お前のお気に入り」

事後の始末もそこそこに、ダラダラと二人寝台の上で過ごすのは最早お決まりのことで。そこには甘さの欠片も無いが、こいつと俺の間でそんなものがあればお互い気持ち悪いだけだ。決まってる。そもそも恋人のような甘やかな時間なんて、目の前で携帯をいじるこいつに求めるだけ無駄だ。そうしたものとは対極の位置に居ると言っていい奴なのだから。

「何だよそれ、白龍のことか?」
「そーそー。その白龍クン?つーか年下だったか…ソイツとは最近どうなんだよ」
「どうもこうもいつも通りだけど」
「へぇ?」
「…何が言いてぇんだよ」
「別に?お前がふつーのオトモダチ作ってんのがな」

心底おかしいとでも言うようにせせら笑う男に、自然に眉間に皺が寄ってくる。何も纏わぬ上半身を壁に寄せつつ長い髪を揺らす相手。漆黒を体現したような男とはかれこれ数年の付き合いになるが、未だによく分からない奴だと息を吐く。まあ分かりたいのかと言われればそういう訳でも無いので、これ位の間隔がちょうど良いのだろう…そうきっと。寝台上に横たえた怠い身体をごろりと転がし、会話をしやすいようにと身体ごと相手の方を向く。暫くして飽きたのかパタリと閉じられた黒いフォルムの携帯が放られる。寝台のシーツに飲まれる塊を見つめていると、底意地の悪い声音が耳へと流れ込んできた。

「なあ、ソイツは喰わねーの?」
「ッジュダル!」
「ハッ、んだよ」

咎め刺すように鋭い声を上げるがしかし、相手は全く気にした様子がない。ケラケラと擬音でも付きそうな笑い顔に苦い気持ちが広がる。ああそうだそうだった。こいつにはどんな説教しようが全部無駄なんだった。いつだってこっちが諦めるしかないのだ。自身を落ち着けるようにゆっくりと深呼吸を繰り返す。

「前にも言っただろ。あいつとはそんなんじゃない」

白龍は良い奴だ。本当に…普通の、良い奴。

「ふ、ははっ!お前のそういう顔久し振りだな」

久し振りに見たと口端を歪めるジュダル。楽しそうな表情のままこちらに片手を伸ばし、頬をキツく覆うように掴んできた。ギリ、と爪が食い込む程強く掴まれ痛みに目を細めると、ジュダルは更に嫌な笑みを深める。

「なあアリババ、お前みたいなのはそういう顔のがずっと良い」

ヘラヘラ綺麗なお人形のように笑うお前は気に食わねぇが、こっちのお前は結構好きだぜ?
ギチリ、ギチリ、と深く刺さるこいつの爪と言葉は申し分なく俺を切り刻むようで。

「…そうかよ。熱烈な告白どうも」
「つまんねーなぁ、もっと喜べよ」
「冗談」
「可愛くねぇ奴」

お前に可愛いだなんて思われたくねぇよ。心にも無い癖に。
いい加減に離せと睨み付けると、最後に一度強く爪を立ててからようやく手が遠退いた。これ血出てんのかな…つーか明日の朝ご飯白龍に頼んじまったんだよな。この傷について聞かれたら面倒だなぁなんてヒリヒリする頬に意識を向ける。対してジュダルはと言えば、もう今のやり取りを忘れたかのように言葉を掛けてきて。

「さっきも思ったけどよ、お前最近太ったんじゃねーの」
「えっ、」
「まぁ一時期すげぇ体重落ちてたからな。別に戻るのは構わねーけど」

これ以上はヤバいんじゃねーの。豚になんぞ豚に。
思いも寄らないジュダルの台詞に一瞬意識が跳ねた。

「う…そういえば最近ちょっと腹周りが」

マズいような気が。
白龍が飯作りを担当するようになってから不規則だった生活が一変した。真面目な白龍は食べる時間も内容もしっかりしていて、特に彼の作る料理は絶品で。ついつい箸が伸びて次から次へと口に運んでしまう。恐らくそれが原因だろう。うぐぐと言葉に詰まっていると、軽い調子でジュダルが言ってきた。

「前より抱き心地は悪かねーけどな」
「…お前そういうの気にするんだな」
「あー?そりゃあ抱き心地は良いにこした事はねーだろ」

それでもまあ男より女の方がやっぱ抱き心地は良いけどよ。だけどあいつら基本面倒くせぇしな。

「お前の扱い方が酷いだけなんじゃないのか」

ジュダルはモテるがそれと共に悪評も凄い。付き合って三日と持った事が無い上に、そうした関係になったとしてもこいつに思いやりの文字など存在しない。己を好く者を躊躇いも無く利用し、飽きたらすぐにポイ捨て…正に女泣かせな男だ。しかしそれでも後釜を狙う女は後を絶たないのだからどんな形であれ幸せなのかもしれない…と言った所で自分には関係の無い話なのだが。

「何だよ妬いてんのか?」
「……」
「ハッ、冗談に決まってんだろーが。そんな不細工なツラすんなよ。萎えるだろーが」

そう言って再びのし掛かって来たジュダルに嫌な予感が募る。

「おい、もう今日は」
「そう言うなよ。つーかお前に拒否権なんてねーから」

さっき集中してなかった罰だと意地悪く笑う男にため息しか出ない。根に持ってたのかよ。

「身体だけはそこらの女より絶品だぜ?アリババクン」
「…それはドーモ」

つり上がった口が降ってくる。塞がれた唇には唾液が塗り込まれ、侵入してきた舌に咥内を荒らされる。何気にキスの回数も多いのだと最近気付いた。セックスについてはお互い何となく同意の下始めたが、当初はキスなんて恋人のように甘やかな交わりなど全くしなかった。ただ身体を合わせ繋げて欲を吐き出すだけの行為で。…けれど少し前から気紛れなのか何なのか、急に唇を重ねるようになったジュダル。経験が豊富だからかそちらも申し分ない実力を持つジュダルに初めは翻弄されっぱなしで。喰われるかのような錯覚を起こす程、最初から遠慮のない蹂躙を繰り返す彼に窒息死するかと本気で思ったものだ。

「、口開けろアリババ」
「…っ、ン」

言われるがままにそっと唇を開けば、更に押し開くように奥まで舌が潜り込んできた。ねじ込まれた舌は不躾にこちらの舌を絡め取り吸い上げ酸素を奪っていく。

「ん、ン…っ、ぁ」

ぬるつく咥内と溢れる唾液。ぼんやりと霞がかってくる視界の片隅で身体に巻き付けていたシーツを引き剥がされるのを見た。スルリと自身の皮膚を滑る冷たいジュダルの手に背が震えてくる。そんな俺を器用にも合わせた唇の端を歪めて笑う彼。腹が立って差し入れられている舌を軽く噛んでやると、ジュダルの目がスッと細められた。その目に灯る加虐的な光に射抜かれた瞬間、マウントポジションの利を用いて上から圧を掛けられた。

「ふ、ゥ…ッぐ、んン…!」

呼吸が出来なくてジュダルを振り解こうと動くが、相手は俺の抵抗など意にも介さず寝台に押し付けてくる。ややして目蓋の裏で明滅が始まり、意識が飛びそうだとグラつく脳がショートを起こす一歩手前でようやく唇が離れた。

「ぐ、ゲホッ、…ッハ、ぁ、」
「きったねー顔」
「る、せ…ッ殺す、気かよ…」
「それはそれで楽しそうだけどな」

(なあ、)

「アリババクン?」


…嗚呼、ちくしょう。
ニンマリ弓なりになるジュダルの表情に俺はただ小さく舌打ちをするしかなかった。





***



一応こんなんでもそれなりに仲良いんですよこの二人。あとジュダルちゃんもアリババくんと白龍くんと同じ大学です。